【術後クレーム解説③】経結膜脱脂術　”術後皮膚がたるんだ”　の理由

シリーズ

【術後クレーム解説①】経結膜脱脂術 術後凹んだ（へこんだ）の理由

【術後クレーム解説②】経結膜脱脂術 ”術後皮膚が黒くなった” の理由

 

の3番めです。

 

今回の記事では

 

経結膜脱脂術をしたら皮膚がたるんだ

経結膜脱脂術をしたらシワができた

 

と感じる人がいる理由を解説していきます。

 

まず、目の下のシワですが大雑把に分けると

お写真のモニター患者様の場合（61歳男性）

 

①.”筋肉でできていて笑うと膨らむ涙袋”の端っこにできはじめ、折れ目が笑いジワと融合しながら増えていく（伸びていく）シワ

②.皮膚ハリが失われていくことによって増えていく小じわ（ちりめんジワ）

③.皮膚が伸び切ってそのタルミがリテイリングリガメント（目の下の骨の縁にある骨と皮膚の結合）に引っかかって折れてできるシワ

 

に分かれます。

 

①と②は体質によっては若い人でもよく笑う人や皮膚が薄い人などでは普通にできるシワです。

若い10代の女優さんでもよく観察するとある人が多いです。

③のシワはかなりタルミ+目袋が強くなってきた方にできるシワなのであまり頻度は高くありません。

 

ではこの61歳男性の患者様が経結膜脱脂術でどうなったかというと・・・

術前

術後2ヶ月

こうなりました。

だいぶパット見た感じの若々しさ、オジサマとしての好感度あがっているとおもいませんか？

 

経結膜脱脂術+脂肪注入の組み合わせは

皮膚を切り取らない手術であって、皮膚自体の若返りをすることは基本的にできない手術なので

 

もともとのタルミ+膨らみの状態から膨らみがなくなってもともとのタルミだけが残るという状態になります。

 

シワというのは後ろから膨らませば当然伸ばされて浅く見えるものですから、その膨らみの原因となっている眼窩脂肪が減れば当然のように術前よりも強く出てきます。

 

これは脂肪の量を多くとっても少なくとっても程度の差こそあれ必ず起こることです。

ちょうど取ればシワが出ないなんて物理法則に反するウソ主張です。

 

そして、脂肪によって膨らむのを支えることができないほど老化した目の下の皮膚は僅かな脂肪の残りであっても必ず目袋の残存となるのです。（要するに中途半端な手術だということ）

ではこの術後に残った

①.”筋肉でできていて笑うと膨らむ涙袋”の端っこにできはじめ、折れ目が笑いジワと融合しながら増えてい（伸びていく）くシワ

③.皮膚が伸び切ってそのタルミがリテイリングリガメント（目の下の骨の縁にある骨と皮膚の結合）に引っかかって折れてできるシワ

はどうすれば良いのかというと・・・

 

1.術前より全体的な若々しさ、好感度上がったのだからシワは皆あるもんだと考えて受け止める。

2.目の下の皮膚を切り取って伸ばす（この方のように下まぶたの縁からシワが遠い人は完全になくなることはありません。）

3.このシワは刻まれているので深いところにボリュームを入れて伸ばすことはできないので（目袋が再発する）、皮膚（真皮）自体にベビーコラーゲンを入れる。しかしながら目の下の皮膚は人体で一番薄いのでいかにベビーコラーゲンとはいえ凹凸が出る可能性は高い。

真皮自体に脂肪を入れる・・・？御冗談を（笑）

 

の3つに分かれるわけです。

 

 

要するに、理屈で考えるなら皮膚を切らない手術を選択するのなら基本的にはもともとあるシワは受け止めるしか無いということです。

 

注入した脂肪から出るFGFなどなどが皮膚を若返らせる～なんてうまいことをいうクリニックもありますが、

○目の下の皮膚は人体で一番薄い

○皮下脂肪がない

場所に

○目周り構成要素（眼球、皮膚、眼窩脂肪、眼窩を構成する骨）が衰えていくのと関係なく元気に生き残り、体重の変動によっては勝手に増えてしまうこともありうる脂肪注入を行うことはとても危険

 

なのはよく考えればおわかりいただけると思います。

あくまで脂肪注入をする場所は骨の上、要するに周りに皮下脂肪がもともとある部分だけにするのが安全なのです。

 

目の下のシワを脂肪注入でなくすことができるのなら体中のどんな細かいシワでも脂肪注入で治せると言うことになります。実際にはそんなことはありません。

目の下は上述の通り特にリスクが高いので慎重にならないといけないのです。

 

ケース2　52歳の男性

術前

術後4ヶ月

上まぶたの手術も行っていますが、今回は目の下だけにご注目を。

術前の様子を見ると目袋は1例目と同じくらい高度に膨らんでのっぺりとした印象になっています。

行った手術は

経結膜脱脂術+マイクロCRF（目の下・中顔面）

術後のシワの状態を確認すると・・・

①.”筋肉でできていて笑うと膨らむ涙袋”の端っこにできはじめ、折れ目が笑いジワと融合しながら増えてい（伸びていく）くシワ

②.皮膚ハリが失われていくことによって増えていく小じわ（ちりめんジワ）

 

だけが少し出ていますがそれほど目立っていません。

これは61歳だった1例目のケースと違って目の下の皮膚テンションがまだ残っていたということです。

 

わかりやすい例えをすると

 

太った人がパンツを脱いだ場合、床の上のパンツは

●伸び切ったパンツのゴムではウェスト周りは伸び切ったまま

●まだ縮む力のあるパンツのゴムならキュッとウェスト周りがしまった状態

になるといった感じでしょうか。

 

要するに体質・年齢によっても引き締まり方は変わるということです。

たまたま、収縮力が残っている皮膚の状態の症例をすべての症例に当てはめることはできないと考えてください。

だから症例写真を見るときはさまざまな年齢・性別・皮膚の性状をなんとなくでも把握するために数十例以上は見てください。

 

 

ちなみに2例目の患者様は目袋がなくなったことにより、手術をやらなかったら将来確実に出るであろう

③.皮膚が伸び切ってそのタルミがリテイリングリガメント（目の下の骨の縁にある骨と皮膚の結合）に引っかかって折れてできるシワ

は一生涯に渡って出にくい可能性もあります。

※眼窩脂肪をしっかり除去すると後で目袋が膨らむことは殆どない、あるいは目袋が膨らんでも非常に軽度。

 

 

最後に3番めのケース　　

術前

61歳女性　皮膚は切らないことを強く希望

経結膜脱脂術+眼窩脂肪注入

術後3ヶ月

シワは術前術後にかけて変わっていませんが見た目の印象は圧倒的に術後のほうが若々しく良いと思います。

 

・・・でもこの患者様2ヶ月目くらいまで

シワがひどくなった、ひどくなった、ひどくなった・・・

と不満足感を激しく訴えてくる方でした。術後3ヶ月位になってやっとご自身の目の下が術前より改善したことを理解することができたようです。

 

要するに、術後の心のダウンタイムで狭視野になって一部だけ（シワ・黒さ・涙袋があった部分の低さ）しか見えなくなる場合

全体的な印象が良くなっても悪くなってしまったと心が落ち込む方がいるのです。

 

世の中のネットの書き込みってこういう時期に書かれることが多いと思います。

書き込んだ人が心が落ち着いたあとにやっぱり良かったとか書きなおすケースは非常に少ないと考えられます。

まぁずっと囚われ続ける方もいると思いますが・・・

 

 

 

ちなみに聴きざわりの良い

○ちょうどの量を減らす

とか

○減らさずに移動して再配置する

とか

○目袋の部分の皮膚に脂肪を入れて皮膚力をアップする

という手術では

 

●取り残しで目袋が残って仕上がりイマイチ

●あっという間の再発（目の下の眼窩脂肪は経時的に増えることが多い）

●涙袋が埋まったまま

●目の下の皮膚凹凸

 

という結果につながりかねません。

 

 

 

繰り返しになりますが目の下の手術には大きく分けて

 

皮膚を切り取る手術と切り取らない手術に分かれます。

この中で

経結膜脱脂術+脂肪注入やハムラなどの皮膚を切り取らない手術のやることは目の下の立体構造を良くするだけの手術です。

悪い立体構造　　膨らみ（涙袋）ー膨らみ（目袋）ー凹み（骨の上）

から

良い立体構造　　膨らみ（涙袋）ー平らあるいは少し凹みー平ら

にするのです。

これだけですがダウンタイムが少なく傷も無く、とても良くなったように見えるのですから価値の大きな手術だと思います。

 

皮膚のテンションをあげるのは皮膚を切り取る手術の仕事。ただし目の下はやりすぎるとあっかんべ～になることもあるので限界はあります。

 

 

 

手術の本質を見極めて、自分に適した手術を見つけられる一助となれば幸いです

(*^^*)

 

 

 

 

予告

ハムラ・裏ハムラが再発する5つの理由（仮）

お楽しみに。