【ワキガ】ベイザー・フォーミュラシェーバー法への道
2023年04月07日
2023年

現在、数多くクリニックが様々な方法でのワキガ(腋臭症)治療をおこなっています。
しかし、ワキガを根本から治すために必要なことは、 「臭いの原因となるアポクリン汗腺を除去すること」 ですので、やはり外科的治療(手術)をすることが一番効果的だといえます。
アポクリン汗腺を切除する手術にも様々な術式が存在します。
今回は、たくさんあるワキガ治療の術式の中から「ベイザー・フォーミュラシェーバー法」を採用するに至った理由を説明したいと思います。
保険適用のワキガ治療
ワキガ治療を目的とする手術で保険適用となっている術式には、
- 「皮膚切除術」
- 「皮弁法(剪除法)」
の2種類があります。
「皮膚切除術法」は、アポクリン汗腺が存在するワキ毛の生えている部分を皮膚ごと切り取って縫い寄せる術式です。
皮膚を広い範囲で切り取ることになるため、大きなキズアトが残ってしまうとともに、ひきつれが生じやすい欠点があります。
汗腺が広く存在していた場合は、周辺に汗腺を取り残すことも十分にありえます。
40年以上前には、この方法を行う施設があったようですが、現在行われることはないはずです。
「皮弁法(剪除法)」は、切開剪除法と呼ばれることもある術式です。現在、保険医療機関で行われる術式は、この方法と言って良いでしょう。
ワキの下を1~2ヵ所、3~5cm程度切開します。そこから周囲の皮下を剥離してから皮膚を反転させ、アポクリン汗腺を直視下で、丁寧にハサミで切除します。
切除されたアポクリン汗腺は再生することがないので、高い治療効果が期待できます。
「皮膚切除法」に比べて、キズアトが小さく、ひきつれも生じにくくなります。

画像-1:「皮弁法」で順調に経過したキズアト(術後1ヵ月)
※赤い矢印の間がキズアトです。
シワと見分けがつきません
とはいえ、切開部から周辺の皮膚に血行障害を生じることがあります。 そのことにより、縫合不全を起こしてキズが開いてしまったり、ひどい場合は皮膚壊死や潰瘍を生じて治癒が遅れることがあります。 その結果、キズアトが幅広くなってしまったり、赤く隆起(肥厚性瘢痕)してしまうことがあります。

画像-2:血行障害のために残った醜いキズアト
保険適用のワキガ治療
保険適用外(自由診療・自費診療)の術式のひとつに、「ローラークランプ法」(別名「ローラーシェービング法」)があります。
ワキの下を2cmほど切開してローラーがついた専用器具を挿入し、汗腺を削り取る方法です。
キズアトが小さくて済みますが、汗腺を直接確認できないため、効果は皮弁法より劣ると言われています。一方で、多汗症の原因となるエクリン汗腺も取り除けるため、多汗症の治療も可能ですが、削り過ぎると皮膚がペらぺらになって血行障害を起こしたり、穴が開いたりすることもあります。
他には「吸引法」と呼ばれる術式があります。
これは、ワキの下を数mm切開して細い管(カニューレ)を挿入し、アポクリン汗腺を吸引する方法です。ダウンタイムが短くキズアトも目立たない方法ですが、汗腺を十分に除去できません。汗腺の取り残しのリスクが高いため、現在、吸引法を単独で行なっている施設はないようです。
フォーミュラシェーバー法
「吸引法」のようにダウンタイムが短くキズアトも目立たないアプローチでありながら、剪除法のように高い治療効果を実現する方法として、新しく考案されたのが「フォーミュラシェーバー法」です。
ストライカー社のフォーミュラシェーバーシステム(旧クワドラカットシェーバーシステム)をベースとした治療法で、ワキの下(上腕側)にあけた7mmほどの小切開から、カニューレを差し込み、アポクリン汗腺を削り取りながら吸引して除去します。
フォーミュラシェーバーシステムのカニューレは、「皮膚を保護するスリットの入った外筒」と「高速で交互回転する刃がついた内筒」で構成されていますので、体に優しく安全性も高い手術方法であるといえます。
効果は皮弁法(剪除法)とほぼ同等で、アポクリン汗腺をしっかり取り除き、ワキガの症状を改善することができます。
また「ローラークランプ法」などの汗腺を削り取る方法よりもキズアトが小さく、術後もキズアトが目立たない美しい仕上がりなのが特長です。
「フォーミュラシェーバー法」をさらに発展した治療法として「ベイザー・フォーミュラシェーバー法」があります。
「ベイザー・フォーミュラシェーバー法」では、「フォーミュラシェーバー法」を行う前に、ベイザープローブと呼ばれる金属棒を小切開部から皮下に挿入します。
プローブから出る「ベイザー波」の超音波振動でアポクリン汗腺を溶解し、吸引しやすい状態にするためです。
お粥のように吸引しやすい状態になったアポクリン汗腺は、より確実に汗腺を削除・吸引することができるため、周囲の組織へのダメージが圧倒的に少なく、ダウンタイムもかなり短くすなることが可能になります。
キズアトが目立たないだけでなく、術後の皮膚の質感の低下も起こしにくいのも特長です。

画像-3:ベイザー・フォーミュラシェーバー法後のキズアト
美容クリニックでワキガ手術を受ける方の多くが、術後のキズアトについて不安をお持ちになっています。
手術を行うのですからまったくキズのない状態にはなり得ませんが、少しでもキズアトを小さく、より大きな効果を得られる治療を模索した結果、現在シンシアでは「ベイザー・フォーミュラシェーバー法」によるワキガ手術を強くおすすめしているのです。